SNSは傷を舐め合うための場か、情報交換するための場か

なんでオタクって空気読めないコメントするの?
を読んで。

何のためにSNSを利用するか。目的が異なる人たちのトラブルの話。
また、感情を優先する人、知識を優先する人、価値観のすれ違いの話。

コミュニケーション優先型

ネットは調べものとSNS*1ぐらいにしか使わないよ、という層がいる。こういう人にとって、SNSは、集団でやりとりするメールのようなものだ。他愛のない話でも、感情が高まったりすると、すぐに出力する。そうすると、同意・同情のコメントが返ってくる。他人の日記を見たら、同意・同情のコメントを送っておく。本気かはさておき。

彼らは、記事によって知識を得ることよりも、コミュニケーションを行うこと自体を目的としている。電話やメールとはまた違った、集団でのコミュニケーションに便利なツールとしてSNSを使っている。SNSはリアルの延長線上にあるのだ。

このような人たちは、感情が揺らぎやすい、他人と強く依存し合いながら生きたい、周囲の人間への興味が強い。他人からの反応がないと辛い、という傾向、価値観を持つ。
淋しい時、誰かの反応を得られる場が必要で、それを確保するために、普段から馴れ合っているのだ。


知識交換優先型

ネットはバリバリ使ってるよ、という層がいる。こういう人にとって、SNSは、巡回先のひとつに過ぎない。厳選されたブックマーク先の優れた記事に比べれば、内容の薄いやりとりは、つまらないものだろう。相手の日記を見るやいなや、自分が過去に見た似たような記事を脳内検索し、どういう解決に結びついたかというのがすぐに思いつく。そのため、次の展開に進めるように、新たな情報を付け加えたくなる。

彼らは、コミュニケーションを行うことよりも、知識を得ることに重きを置く。2chの文化圏では丁寧語がウザく感じたりする。ひろゆき自身が、挨拶などを「無意味」な情報としていて、コミュニケーションとして合理的でないと考えており、そういう思想が常識となっているからだ。だから、ただの同意・同情コメントには、価値がない。あるのは、ノイズだけである。

また、知識交換の場を設けることは、互いの知識を共有することで、Win-Winの関係を築くことが目的である。もちろん、相手とのコミュニケーションも楽しめるが、知識の共有による、自己の知識の増幅こそが、主たる目的だ。

このような人たちは、感情の揺らぎを人にぶつけることに価値を感じない、他人とはゆるく付き合いたい、人間よりも物に興味がある、という傾向、価値観を持つ。
淋しいと感じるということは基本的にはない。あっても、ノイズコメントをマメに発信するような労力をかけるくらいなら、そんな場は必要ない。


同意されることで得られる快楽、知識欲を満たされることで得られる快楽

両者が決定的に違うのは、何をもって快楽を得られるか、ということだ。
また、彼らがコメントする内容は、自分だったらどうしてもらえたら嬉しいかに従う。

  • コミュニケーション優先型
    • 同意・同情コメントを貰うと、モニターの向こうの相手の人の気遣いに喜ぶ
    • 同意・同情コメントを送るようになる
  • 知識交換優先型
    • モニター上に置かれた知識*2に喜ぶ。
    • 自分の価値観に変化を与えるような批判コメントでも受け入れられる
    • 豆知識コメント、批判コメントを送るようになる


ここで、異なる型の人同士がコメントをつけるとどうなるか。

  • コミュニケーション優先型
    • 前提:モニターの向こうの相手の人の気遣いを重視している
    • 豆知識コメント、否定ニュアンスなコメントがつけられる
    • 何コノ人?自分の知識をひけらかしたいだけなの?なんでそんなにエラソーなの?
  • 知識交換優先型
    • 前提:モニター上に置かれた知識の有用さを重視している
    • 同意・同情コメントがつけられる
    • くそっ、ノイズが増えちまった。こんなコメントないほうがマシだ。


お互い、よかれと思ってやっていることでも、価値観が異なったために、期待したのとは逆にとらえられてしまう。


互いの価値観を理解しよう

この問題について、こっちの陣営は間違ってるだろうと思った人は、危険だ。この問題に絶対の正解はない。
絶対の正解はないが、どちらが適切であるかは判断できる。そのコミュニティを形成している人々が、どちらかに大きく偏っている場合なら、そちら側が、そのコミュニティの「空気」となる。「空気読め」である。SNSのケースでは、コミュニケーション優先型の人が集まる場なので、同意コメントが相応わしく、2chや、ここ増田などのケースでは、自分の見解を述べるほうが「空気」が読めている。

自分のスタイルを貫くのは気持ちがいいのかもしれないけれど、その場を形成する参加者のタイプを見極めなければ、ただの自分勝手なヤツとなってしまう。
よかれと思ってアドバイスしたのに反論された、というのは、相手が求めているものを見ようとしなかったことであり、結果として単なるエゴである。相手のためを思うなら、本心でなくても同意しておけば波風は立たない。本当に大事な相手なら、きっちり指摘してあげたいけれど、相手に指摘を受け入れる準備ができていなければ、その指摘も、ただの嫌味になってしまう。

増田に言及してみる

オタクは同意のためのコメントを書かない。いや、書けないのかもしれない。
豊富な知識を披露したくなるというのは分からなくもない。
オタク同士であれば、情報でコミュニケーションをとるのは珍しくないだろうから。
だけどオタクでない人の日記にコメントする際は気をつけた方がいい。
求められていない情報は、ノイズになる。
自分が何かのオタクだと自覚のある方は、書き込みボタンを押す前にもう一度読み直してほしい。

なんでオタクって空気読めないコメントするの?

この増田の指摘は、大体、正しい。オタクには理解しずらいかもしれないが、正しい。


そして、逆のケースも考えられる。

  • オタク*3は同意のためのコメントは価値が低いと思っている。
  • コミュニケーション優先型の人にとって、オタクがよかれと思ってしたアドバイスは、ただの知識のひけらかしとなってしまう。
  • 逆に、オタクな人の日記に同意コメントすることも、オタクにとってはノイズとなる。
  • オタクは、自分と価値観がまるで違う相手だとわかったならば、本心を捨てて、相手のためにならなさそうな、上っ面だけの同意コメントをぶっぱなしたほうが、丸くおさまる。

なんでオタクって空気読めないコメントするの?

ところで、この増田記事、巧妙過ぎるんですけど…。
これって、「そうそうウザいよねー。」って同意しなかったら、お前は無理解だ。て思われるトラップが仕掛けられてるとも見れる。
増田に書いている時点で、マジレスしていいって理解するよ?

*1:というかmixi。フリーダムSNSとかは含めない。

*2:と、提供してくれた相手のありがたさ(便利さ)

*3:増田の定義するオタクはオタク趣味を嗜む者全般を指していないので注意